目と体のリラックス
体のリラックス
リラックスとは、筋肉がゆるみ、呼吸がゆっくり深くなり、心拍がおだやかになり、皮膚の状態が変わる、といった体の状態をいいます。ベイツ博士の説く受動的な目のリラックスを語るには、まず体全体をゆるめ、緊張を解くことから始めなければなりません。体全体が緊張したままでは、目の筋肉だけをゆるめて目を休めることは難しいからです。心の緊張、神経の高ぶり、不安、ストレスは、目の見え方の質や鮮明さをつかさどる目の筋肉も含めて、筋肉に緊張を生みます。体が疲れているとき、目はうまく働けません。リラックスの基本は次のとおりです。
- 十分な睡眠をとりましょう。睡眠は体を、そして目を休ませてくれます。
- スポーツを通じて、体全体をできるだけよく動かしましょう。特におすすめなのは、週に一度の水泳と、ランニング、サイクリング、アイススケート、ローラーブレード、あるいは夕方の軽い散歩といった、楽しみながらできる運動です。いちばん楽しいと思えるものを選んでください。体も目も、すぐにそのよろこびにこたえてくれます。
- 視力のエクササイズを始める前に、以下に紹介する体と心をゆるめるエクササイズをいくつか行いましょう。
エクササイズR1:ストレッチ
このエクササイズは、本格的な目のエクササイズを始める前に行うウォーミングアップのようなものです。わずか2分で肩・首・上半身の筋肉をゆるめ、このあとのエクササイズのよい土台をつくります。
足を少し開いてまっすぐ立ち、次のエクササイズを行います。
- 両腕で円を描くように、片方向に、続いて反対方向にまわします。
- 体を右に傾け、右手を右脚に沿って下ろします。左側でも同じように繰り返します。
- 上半身を左右に半分ずつひねります。
- 両手を組み、体の前で両手を使って円を描くようにまわします。
- 壁やドアの前に立ち、手で体を支えながら、腕立て伏せのように胸を内側へ動かして背中の筋肉を伸ばします。
- 頭の高さを保ったまま、首を右と左に5回ずつまわします。
- はじめの姿勢(頭はまっすぐ)から、頭を左下へ傾けて戻す動きを5回行い、続いて右側でも繰り返します。
- あごが胸につくように頭を下げ、その状態のまま右と左に5回ずつまわします。
このエクササイズのセットは、自由にアレンジしてかまいません。目的は、上半身、とくに首と肩をしっかりゆるめることです。
エクササイズR2:ブレインジム
以下のエクササイズは、本格的な練習の前に脳と体全体を活性化させるために、ポール・デニソンが考案したものです。すべてを行う必要はありません。気に入ったものを選んでください。
交互の動き
右ひざを上げて左ひじで触れ、次に左ひざを上げて右ひじで触れます(その場で足踏みをするような動きです)。このエクササイズは、左右の脳の広い範囲を同時に刺激し、両半球のあいだのやり取りを高めます。
レイジーエイト(寝かせた8の字)
手を使って、空中に横向きの8の字(無限大の記号)を描く、またはなぞります。動きはいつも中心から始め、上へ、そして左へと進みます。まず左手で、次に右手で、最後に両手を組んで行います。このエクササイズは左右の脳を統合し、手と腕の筋肉をゆるめ、目で追う力を養い、なめらかな手と目の協調を促します。
目のためのレイジーエイト
親指を目の高さで、体の正中線上、ひじ一本ぶんほど離して構えます。頭は動かさず、力を抜いたまま、目だけを動かして親指を追います。上で説明したように、親指で8の字を描きます。なめらかで均一な動きを、それぞれの手で少なくとも3回続けます。次に、両手を合わせ、親指でXの形をつくります。Xの中心に意識を向け、組んだ親指がレイジーエイトを描くのを追います。目のためのレイジーエイトは書くためのレイジーエイトと似ていますが、ここでは目の動きと、手と目・目と手の協調を高めることに意識を向けます。
パーミングについて
目をリラックスさせるには、目を閉じ、手のひらで目を覆って(パーミング)、光をすべてさえぎる方法があります。視覚の刺激を断つだけで、深いリラックス状態が生まれることもあります。ただし、目を覆って閉じても、同時に心の緊張を取り除かなければ効果はありません。パーミングがうまくできると、これ以上暗いものは思い描けない、想像もできないというほど深い黒の視野が見えます。それができた瞬間に、あなたの見え方は正しいものになります。
目がうまく働いていない人は、はじめのうち、目の前に完全な黒さを生み出すのがとても難しいことがあります。眼窩の中の緊張のために、視野は灰色の雲や明るい筋、動く光や色でいっぱいになります。
エクササイズR3:パーミング(目を覆う)
- テーブルに向かって座っている場合は、ひじをテーブルにつく姿勢をとります(クッションを使ってもかまいません)。あるいは、ひじを直接ひざにのせます。
- 両手を交差させて目を覆い、光が入らないようにします。指は額に、手の下のほうは頬骨にあて、手の縁が鼻に軽く触れる程度にし、押さえつけないようにします。目が自由にまばたきできるように手を当ててください。温かさが好きな方は、目に当てる前に両手をこすり合わせるとよいでしょう。目がよく休まっている人は、視野全体が一様な暗闇で満たされます。そうでない人は、光のひらめきや、ゆらめく色、灰色など、さまざまな視覚的な錯覚が見えます。
- 暗闇、真っ黒な状態を思い描きます。鼻でゆっくり呼吸します(吸って、吐いて)。息を吸うときに筋肉や体の各部分(肩、腕、脚、太もも、足、肋骨など)が広がり、吐くときにゆるむのを感じてください。
- たとえば、自分の家が真っ黒で、街も真っ黒、さらに国も大陸も真っ黒だと思い描きます。黒い色を強く連想させる物や場所なら、何を思い浮かべてもかまいません。黒い塗料、黒いピアノ、黒いエナメルの靴、暗い夜、深い井戸などです。その対象に意識を向け、どれほど暗いかを思い描きます。目の前の黒さが深いほど、目はより深くリラックスします。
- 目は閉じても開けても、どちらでも楽なほうでかまいません。
- 目を上下、左右、そして円を描くように、小さく数回動かします。
- ゆっくり目を開け、目がどれほどリラックスして楽になっているか、そしてそれによって見え方がよくなっているのを感じてください。
日光を浴びることについて
サングラスがあふれる今の世の中では、多くの人が明るい光や、その急な変化にあまり慣れていません。歴史の大半において、晴れた日は人類にとって何の妨げにもならず、自然の光を心地よく受け入れられるようになることは、健康な目の一部です。これは、本当に過酷な環境で目を守るのをやめるという意味ではありません。やさしく少しずつ日の光に慣れていくことが、目を整え直す助けになる、ということです。
光に正しく反応できるよう慣れていくことは、意識して見る技術を身につけるための基本のひとつです。正しく見え、リラックスした状態を保てる目にとって、太陽の光は欠かせません。
ベイツ博士によれば、「日光浴」は、太陽光の殺菌作用によって、目やまぶたのさまざまな炎症に良い働きをします。また、目の筋肉の有害な緊張をゆるめ、まぶしさや強い光に対する敏感さをやわらげ、光をこわがって眉をひそめたり目を細めたりする必要をなくしてくれます。さらに、視力を学び直すために欠かせない条件である、目の受動的・動的なリラックスを学ぶ最初の段階でもあります。
エクササイズR4:ソラリゼーション(日光浴)
- 太陽のほうを向ける場所に立つか座ります。とてもよく晴れた日なら、明るく照らされた空を向くだけで十分です。季節が向かない場合や日の当たる場所がない場合は、100ワット以上の電球を使ったランプを使います。
- 目を閉じ、顔をゆっくりと太陽、空、または電球のほうへ向けます。
- 頭をやさしくゆっくりと左右に約20〜30回動かします。網膜の同じ場所が長く光にさらされないよう、頭を動かし続けることが大切です。日光にとても敏感な方は、太陽そのものではなく、まず空を向くことから始めてください。
- 続いて、深くゆっくり呼吸しながら、少なくとも1分間パーミングを行います。
- 時間に応じてステップ3〜4を繰り返します。ときどき、これに20分ほどかけてみて、目がどれほど休まり、虹彩が刺激されるかを感じてみてください。同じ部分が長くさらされないよう、頭を動かし続けます。不快に感じたら、太陽から顔をそむけ、しばらく手で目を覆ってください。
エクササイズR5:目に活力を与える
目と、見るというはたらき全体は、体が使えるエネルギーのうち大きな割合を使っていると言われています。だからこそ、そのエネルギーを目に補うことが大切です。次のエクササイズの目的は、目から古くて使い果たされたエネルギーを取り除き、新鮮で健やかなエネルギーで満たすことです。これはレオ・アンガートの著書『自然に視力を回復する(Improve Your Eyesight Naturally)』をもとにしたものです。このエクササイズは少しおかしく感じられ、目指すものも小さく思えるかもしれませんが、だまされたと思って、少なくとも2週間は続けてみてください。リラックスの段階をうまく補ってくれるもので、より負荷の大きいエクササイズの前に目へ十分なエネルギーを与えるため、それらのエクササイズの最後に行うのが最適です。なお、このエクササイズだけを一日中30分おきに行い、比較的短い期間で、かなり大きな視力の問題(およそ2ジオプトリー)が軽くなったと報告する人もいることを付け加えておきます。
このエクササイズは1日に少なくとも3回(理想的にはリラックスのエクササイズの最後に)行うとよいでしょう。
- 指先を手のひらの中心に当て、続いて両手を勢いよく振ります。
- 青リンゴの色をしたやわらかなエネルギーが、手のひらの中心から曲げた指へと、緑色の光線のように流れていく様子をイメージします。
- 目を閉じて、この緑色のエネルギーを、目の真ん中(眉間)にあるエネルギーの中心へまっすぐ向けます。手から目へ直接そそがれる、尽きることのないさわやかな緑色のエネルギーの流れをイメージします。エネルギーが目を満たし、水晶体から中心窩まで届き、目を囲む筋肉や視神経にまで広がる様子を思い描きます。エネルギーを送りながら6〜8回深く呼吸し、それから手を下ろします。
- 次に、指先から約10 cm(4インチ)先まで伸びる、透明な緑色のエネルギーの手袋をはめていると想像します。それを使って、目から古く使い果たされたエネルギーを払い取ります。目のすみずみまで、必ずきれいにしてください。奥のほうから、角膜、硝子体、まわりの筋肉、そして最後に水晶体と眉間まで払います。使い果たされたエネルギーが目から引き出されていくのを感じるでしょう。
エクササイズR6:まばたき
空気中のほこりは目の表面に積もります。だからこそ、こまめに楽にまばたきをすることが、目の表面をきれいにし、うるおいを保つために欠かせません。まばたきはまた、目に少しの休息を与えるもっとも手軽な方法でもあります。目に悩みのある人は、まばたきがとても少なく、代わりにじっと見つめて目を見開きがちですが、自然に目を使っている人はよく、楽にまばたきをします。残念ながら、緊張があると、まばたきが少なくなり、力を入れてまぶたを動かしがちになります。まばたきは、じっと見つめるという悪い習慣を断ち切るのにも役立ちます。
まばたきの役割には、涙で目をうるおしてきれいにすることや、光源からさえぎることで目に少しの受け身の休息(短い遮光)を与えることがあります。ですから、できるだけこまめに(1〜3秒ごとに)まばたきをすることがとても大切です。そうすることで目はうるおい、リラックスした状態に保たれます。
- 6〜10回、すばやく楽にまばたきをし、続いて軽く閉じた目を数秒間覆います。
- 次に10〜20回まばたきをし、もう一度数秒間覆います。
エクササイズR7:中国式の目のツボ押し
親指か人差し指の腹のうち、そのツボを押しやすいほうを使います。ツボはすべてイラストに示してあり、押すとはっきり痛みを感じるので、正確な位置を簡単に見つけられます。それぞれのツボをやさしくマッサージし、押して、エネルギーの流れの詰まりをほぐします。鋭い痛みが出ない程度に力を加減し、マッサージしながら少しずつ強めていきます。
- 眼窩の上の縁にある3つの緑色のツボ。軽い力で小さく円を描くようにマッサージします。
- 眼窩の下の縁にある3つの青色のツボ。ここでは数本の指を使って、下の縁全体をマッサージしてもかまいません。
- イラストに示した、鼻のまわりの3つの赤色のツボ。
エクササイズR8:交互の眼球運動
- このエクササイズは、立っても座っても行えます。
- 頭を動かさずに、目を上下に何度か動かします。まわりの物に焦点を合わせず、視線をやさしく動かしましょう。
- 次に、同じように、今度は左から右へ、また右から左へと、何度か動かします。
- 続いて、左下から右上へと斜めに動かします。
一次資料:W. H. ベイツ Perfect Sight Without Glasses(1920年)第12章(パーミング)・第17章。全文はWikisourceで読めます(英語)。